第234回
私のお気に入りの一品
いつも、お気に入りお気に入りとやっていますが、
私が中国古陶磁器の中で本当に一番気に入っている焼き物は
一般に「鈞窯」と呼ばれている作品です。
「鈞窯」を厳格に言えば、
北宋時代に河南省兎県で誕生した
非常に洗練された焼き物を焼く窯の事ですが、
広義で言えば北宋時代以後も
その作風を真似た焼き物全てを「鈞窯」と呼びます。
それら「鈞窯」の焼き物は、河南省だけではなく、
金時代から元時代にかけて
河北省や山西省などの広い地域で焼かれました。
鈞窯と呼ばれる陶磁器は広い意味で「青磁」の範疇に属しますが、
その作風は青磁の釉薬に色々と工夫を凝らし、
とても変化のある釉色に焼き上がる
「濁青釉」を主体としています。
私が「鈞窯」を好きな理由としては、
鈞窯と言っても北宋時代「官鈞」と呼ばれ
皇帝に献上されたものから元時代の雑器まで、
それこそ価格的にも何億円から何千円まで
正にピンからキリまである事です。
それがコレクター魂を煽るのです。
初期鈞窯の澄んだ青色の事を清の乾隆帝が
「雨過天青」(雨が上がった後の澄み切った空の色)と呼び
大変気に入ったという史実がありますが、
私も同様にあの色が大好きです。
北宋時代の鈞窯は正に研ぎ澄まされた感じのする焼き物ですが、
女真族の「金」そして蒙古族の「元」と
その支配者が変わる間に広範囲で焼かれるようになり
作風も砕け庶民の焼き物となっていきます。
そういう身の回りの雑器的な「鈞窯」にも
親しみが持て収集欲が湧いてきます。
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北宋時代の典型的な「鈞窯」
研ぎ澄まされた形と釉色 |
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北宋時代〜金時代の「鈞窯」
この頃から作為的に紅斑紋と呼ばれる
赤紫色の発色の「鈞窯」が焼かれた |

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金時代〜元時代の「鈞窯」
磁州窯系列の雑器窯で焼かれた
こういう「鈞窯」も親しみが持てる |
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清時代に入って焼かれた「鈞窯」写し
やはり、面白くない
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