中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第247回
中国料理

今回はハイ天常連のピカイアさんからリクエストがあった
「スープ」についてのお話です。

いきなりですが、「スープの定義とは?」
と問われると皆様は何と答えますか?

私なら、簡潔にこう答えます。
「スープとは、食材を水で煮込む事により
食材の旨みが水に移ったもの」

つまり、基本的なスープとは
何らかの食材を水で煮ただけのものであるという事です。

中国料理と言えば、
すぐに上湯(シャンタン)などの
高価な基本スープを思い描く方もいると思いますが、
本来のスープとは食材と水だけで作るものなのです。

ちなみに中国語でスープのことを「湯(タン)」と呼びます。
よくある笑い話ですが、
中国人が日本の「銭湯」の事を
スープ専門店と間違える話がありますが、
確かにそれは本当に起こり得る話だと思います。

通常の中国料理レストランでは、
まず全ての料理の基本となるスープを作ります。

洋食で言えばブイヨン、
日本料理なら一番出汁というやつです。

中国料理の基本スープとして、
日本ではよく鶏がらが使われますが、
中国では老鶏(ラオジィー)
つまりもう卵を産まなくなった年寄りのニワトリを
丸のまま使います。

その基本スープに、
中華ハムや干し椎茸や干し貝柱や香味野菜などを足して
更に長時間加熱して、
仕上げたスープを上湯(シャンタン)と呼びます。

その上湯(シャンタン)をベースとして
フカヒレスープなどを仕上げていく訳です。

そのような流れのスープの中での究極はやはり
「佛跳牆」(ファティアオチョン)でしょう。

「佛跳牆」は壷に入れた上湯(シャンタン)をベースとして、
更に干し鮑やフカヒレや干し魚浮き袋などの最高級素材を
惜しげもなくぶち込んで作る蒸しスープですが、
「佛跳牆」という名前は
お坊さんですら垣根を飛び越えて食べに来るという意味で、
それほど美味だという事です。

私も香港などで何度か「佛跳牆」を食べた事があります。
でも、確かにそれなりに美味しいのですが
対価として払ったお金程度の感動でしかありませんでした。

私が今までに
本当に美味しいと感動したスープはいくつかありますが、
その全てが上湯(シャンタン)をベースとして作ったような
高価なスープではなく、
基本的に「水+食材」だけで作ったものです。

その一つは上海の家庭でよく作られる、鮒のスープ。
一度油で焼いた鮒(10cmほど小鮒)を水と
生姜と葱だけで煮込むだけのスープですが、
正に感動する美味しさです。

たぶん作り手にもよると思いますが、
美味しくできた鮒のスープは魚の臭みが100%なく、
スープは白濁し、濃厚でいてくどくなく、
キレがあるのにコクもあり、
うまく説明できませんがとにかく美味いんです。
私はいつも鍋一杯飲んでしまいます。

もう一つは、酸菜魚。
これも、魚のスープと言うか鍋料理です。
青魚(チンユイ)とか草魚(ツァオユイ)などの川魚を
高菜や唐辛子などと共に水から煮込んだスープです。

これは中国の幾分パサついた白飯にかけて食べると最高です。
このスープは韓国料理の参鶏湯と同じく、
この品だけの専門店が存在する程有名な料理ですが、
本当に美味しい店はそんなに多くありませんので要注意です。

イタリアでは、「アクアパッツァ」と言って
魚介類を水だけで煮込む料理があり、
やはりそれをイタリア魚介料理の究極だとする人もいます。

つまり、美味しいスープを作る為に
難しい基本スープなどを
いちいち作る必要など一つもないという事です。

水に、トマトを入れ、卵でとじ、
塩と胡麻油だけでも大変美味しいスープが出来上がります。

あっさりしていますがじっくり味わってみて下さい、
トマトと卵という食材の味が見事に水に染み出しています。

新鮮で質の良い骨付きの豚肉を水と塩だけで煮込み、
最後に青梗菜を入れたスープでもそうです。
そのようなスープが一番美味しいと私は思います。

つまり、中国料理における究極のスープとは
決して「佛跳牆」のような凝ったものではなく、
新鮮で質の良い食材をそれに適した方法で調理し、
素材の旨みを十分引きだし出来上がったものだと私は思うのです。

美味しいスープとは
「食材そのものが持つ旨みを
どれだけ引き出せるか」で決まる。
 
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2009年5月8日(金)

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