第257回
☆目利きへの道☆ 高額落札品より
まず、この二品を比べて下さい。
一つは2億円を超えた価格、
もう一つは1000万円程で落札されています。
(10年以上前の価格なので、今は更に高額になっています)
どちらが2億円以上の品でしょうか?
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A |
B |
回答を言う前に、まずこの焼き物について説明いたします。
この焼き物は「釉裏紅」と呼ばれるもので、
元時代に開発されました。
上の二品は明時代初期「洪武期」に焼かれたものです。
この赤色の焼き物には特別な意味があります。
元王朝の衰退と乱世により、
もともと西アジアから輸入されていた
酸化コバルト(青色の呈色剤)の入手が困難になります。
そこで、酸化コバルトの代わりとして
酸化銅を呈色剤とした
この焼き物が焼かれるようになったのです。
しかし、酸化銅を綺麗に発色させるのは至難の業で、
窯の状況が少しでも変われば、
焼き物は黒に発色したり、また色自体が飛んでしまったり、
文様が全て消えてしまったりしてしまいます。
そんな難しい焼き物だった上に、
焼かれたのは限られた期間しかも少量でしたので、
元〜明洪武期の「釉裏紅」は
現在その残存数がとても少なく
大変希少で高価な焼き物となっています。
そういう観点からこの焼き物を見ていきますと、
AもBも大変キレイな赤色に発色しています。
この素晴らしい赤色の発色だけでも大変希少価値が高いのですが、
Bの方の焼き物は文様の輪郭までハッキリと出ています。
この色と輪郭の両立こそが釉裏紅では困難な事なのです。
「赤色がキレイに出ていて輪郭もしっかりしている」
これが釉裏紅のピンからキリまでの「ピン」となります。
多分、このBの作品が世界中に残っている
明洪武期の釉裏紅の瓶の中で最高のものではないでしょうか。
最高のものには
とんでもない価格が付くのが古陶磁器の世界なのです。
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