中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第269回
ハイハイ天さん、天さんデス

○今回の依頼者

[ペンネーム]  天ちゃん
[職業] 会社員
[年齢] 61歳

毎回、楽しみに拝見させていただいています。
私は61歳の会社員で陶磁器の収集を始めて35年程になります。

この天目茶碗は14年前、私が上海駐在員の所長として赴任中に、
中国人社員の家族から譲っていただいた茶碗です。
<中略>
できましたらこれを機会に
天さんに時々お邪魔させていただき
色々と勉強させて戴きたいと思います。

依頼品
造形、釉色、古色などに違和感はないが・・

依頼品 底部
このような荒い土は見た事がない


○鑑定結果

ご依頼の茶碗は、
南宋時代に吉州窯で焼かれた「玳皮盞」と呼ばれるものです。

「玳皮盞」とは、
鼈甲(べっこう)に似せたデザインの焼き物です。

吉州窯にはニセモノが大変多いので、
最近のニセモノ状況について述べたいと思います。

吉州窯で一番有名な「木の葉天目」を除けば、
ここ数年、土質、釉薬、造形、どれをとっても
本物に限りなく近いコピーが作られているようです。

ネットオークションで見かけるものは
殆どレベルの低いコピー品ですが、
本物に限りなく近いコピーに関して言えば、
プロでも中国専門じゃないと殆ど見分けが付かないと思います。

また、ここ数年で格段に倣品技術が進んだ中国陶磁器には
吉州窯の他「耀州窯」「明時代の民窯青花磁器」などがあります。

この辺の正確な倣品を昔のままの知識と感覚で鑑定すると
大きな間違いを犯す事となるでしょう。

前置きが長くなりました。
で、依頼品を見ますと全体的には矛盾がないように見えます。
口縁回りの造形や古色も自然な感じがします。

しかし、100%本物と断言できない部分は高台の仕上げ方です。
吉州窯の茶碗の高台には独特の特徴があります。

まず、一つは他の茶碗に比べて高台作りが貧弱と言うか、
あまり気合が入っていない所です。
もう一つは、高台を切る際、
回りを全体的に一度ヘラで削った後高台を作る点です。

本物の吉州窯茶碗の高台、
貧弱だが個性的な仕上がり

それと土質ですが、
私が今まで見てきた吉州窯の土質には二種類あります。
灰白色のものと若干茶色掛かったものです。

茶色掛かった土のものは
丁寧な作行きの天目茶碗においてよく見られる事から、
推測ですが多分これは当時流行した
「建盞」の鉄分の多い土を真似たものだと思います。

いずれにしても、
灰白色も茶色の土も細かい砂質のものです。

ここで依頼品の高台を見ますと、
荒い土質とこのような高台の切り方の吉州窯茶碗を
私は見た事がありません。

でも、全体的な雰囲気からすればニセモノという感じもしません。
正直、判断に苦しむ作品です。
現物を手にとって見れば分ると思うのですが、
画像だけで結論を出すまでには至りませんでした。。

価格的には、本物なら中国で15万円〜35万円、
日本で古い箱に入れられ「支那てんもくちゃわん」
などの箱書きがされて由緒ある骨董店で売られれば
100万円という所でしょうか。

○結論

すみませんが、どうしても真贋が知りたければ
中国古陶磁器を専門に扱っている
東京か大阪の一流の骨董屋さんで聞いて下さい。

あと「これを機会に天さんに時々お邪魔させていただき」
とございますが、
残念ながら私のコラムは277回で終了してしまいます。

ですので、鑑定依頼品が他にいれば、急いで全部送って下さい。

 
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2009年6月29日(月)

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