第272回
中国料理
今回も「中国古陶磁器に盛って映える料理」
略して、中国料理のコーナーのです。
今回は、中国料理における
牛肉の立場について考えてみたいと思います。
まず、第一に牛肉を食べる文化とは
一体どのようなものでしょうか?
牛肉を食する事は文明的な事でしょうか?
それとも、野蛮な事でしょうか?
語弊があるかも知れませんが、
私は牛肉を主に食する文化というものを
決して文明的だと思いません。
何故なら、本来、牛肉なんてものは獣臭い上に
固くて決して美味しいものではなかったと思うからです。
私は食文化の研究者ではないので詳しい事は知りませんが、
牛肉なんてものは狩猟民族が移動しながら
野生の牛を追い掛け回して捕って食べていたものでしょう。
また、それを家畜として使うようになってからは、
年老いて働けなくなった牛を仕方なく食べていたのでしょう。
どちらにしても臭くて固くて不味い事にはかわりはありません。
それに比べて、豚肉、鶏肉はどうでしょうか?
これらは、野生のままでも
十分美味しい食材だと言えるのではないでしょうか。
イノシシのような野豚でも、鴨や鳩でも、
これらは野生のものを捕ってそのまま食しても
十分美味しい食材として、
中国の食文化に根付いていったと思われます。
中国で「肉」と言えば豚肉を指すぐらいですから、
基本的に牛肉を使った中国料理は珍しいものです。
それは、日本の懐石料理に
牛肉を使ったメニューが殆どないのと理由は同じです。
日本は島国なので
主に魚を食す食文化が発達してきた事もありますが、
日本料理に牛肉が使われない理由を簡単に言えば
魚よりも牛は不味かったという事でしょう。
また唯一、日本には「すき焼」というものがありますが、
あれも元々は死んだ農耕用の牛を無理やり食する為の
あまり程度の高い食べ物ではなかったと思われます。
また、牛肉のシャブシャブはモンゴルの
涮羊肉から来ていますので、日本の料理ではありません。
そういう事から、
牛肉を食する習慣が浸透していないからと言って、
その国の食文化の程度が低いという事では全くありません。
逆に血の滴るような牛肉のステーキを貪るような食文化の方が
野蛮だと言っても良いぐらいでしょう。
ですので、中国では長年、食肉として豚肉、鶏肉、羊肉、狗肉、
蛇肉、駱駝肉、センザンコウ肉などを優先し、
美味しい牛肉の開発などには全く力を入れてきませんでした。
あるにはあるのですが、
古典的な中国料理において牛肉を扱う事は非常に稀な事でした。
やはり、牛肉は固くて臭かったからでしょう。
そういう事から、
中国では牛肉を扱う際には独特の調理法を用います。
食用の重曹を使い、しばらく肉を漬け込みます。
すると、肉の繊維質が崩れとても柔らかくなります。
更に、醤油や酒などで下味を付け、
油を足し揉み込み味を補填します。
逆に言えば、それほど一昔前まで使用していた牛肉が
固くて臭かったという事です。
しかし、ここ10年数年、
そのような中国の不味い牛肉文化にも
大きな変化が現れてきています。
輸入品もありますが、
日本の高品質牛肉の育成方法を取り入れた牛肉の普及もあります。
日本人にはその意識はあまりないと思いますが、
日本人の努力による
和牛の品種改良の成功は歴史的な大事業だと思うのです。
間違いなく、
今後中国の牛肉文化は大きく変わっていく事となるでしょう。
だた、日本料理と同じように、
それにより中国料理に牛肉を取り入れた
メニューが増える事はないと思います。
その理由は、中国料理の調理法や味付けと
たっぷり脂の乗った牛肉は合わないという事です。
今後の中国における美味しい牛肉の使い道としては、
まず韓国式焼肉、ステーキ、すき焼、
シャブシャブなどのお店が更に増えていき、
家庭でもステーキを食べたりするようになっていくのでしょう。
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中国料理での牛肉の立場は豚より下
質のよくない牛肉を重曹と
調味量でごまかした上に
しつこい味付けで
更に素材本来の味を目立たなくする。
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このような霜降りの牛肉は
中国料理には合わない
中国でも、ステーキや
焼肉が牛肉消費の中心となろう |
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