第274回
小休止
中国株などに多くの資金を投じているのに
中国に対する認識が全くできていない人が多い事に
驚かせられる事があります。
中国株を論じる時に、
夢のような成長神話を語ったり、
どんな企業でも投資して長期間放っておけば
間違いなくお金が儲かるなどと思い込んでしまう人がいます。
ケ小平の号令の下、
中国が本格的に経済開放してからすでに30年近くが経っています。
私はその内の20年間の成長を肌で感じて実感していますが、
これは日本の60年代から80年代の成長に匹敵すると言えます。
特に上海などは、今やリニアモーターカーが走り、
田んぼとヤオハンぐらいしか見る所がなかった浦東に
高層ビルが立ち並び、
市街地には世界中の有名ブランドが並んでいます。
何度も言いますが、
今の中国は「日本の1960年代」などでは絶対にありません。
すでに沿岸部は先進国に追いつき追い越すほど発展してしまい、
中国人も口を開けば「競争が激しくて全く儲からない」
と愚痴をこぼしている訳です。
また、ここ数年の中国では国の国幹工事が相次ぎ、
海外から多くの工場が移転してきたり、
多くのマンションが建てられたりで
固定資産投資は毎年毎年爆発的に伸び続けました。
しかし、そういう爆食的成長もいつまでも続く訳はありません。
日本で中国の農村部の貧困さを訴えるTV番組などを見て、
「中国はまだこんなに遅れているのか?
こういう地域の人の所得が先進国並みまで増えれば、
中国は恐ろしい事になるな」と考えて、
中国経済はまだまだ伸び続けると単純に考える人がいます。
私はそうは思いません。
やはり、農村の人の収入は少しマシになる程度で
いつまで経っても貧乏のままでしょう。
農村部まで含めて13億人全員が
先進国平均並みの所得になる事はあり得ません。
もしそうなれば、
少し大袈裟ですが世界は色々な意味で滅んでしまう事でしょう。
そういう意味から、
もう一度中国経済の発展をおさらいしてみますと、
今現在の中国経済は成長期から
成熟期に入ってきた所だと思います。
ただ、中国の場合、都会と田舎がハッキリと分かれていますので
都会部は成熟期に入ったばかりの所、
田舎はこれからが成長期だという事です。
しかし、田舎の成長期は非常に短く浅く、
お金が一巡すればそれで終わり程度のものだと
私は考えていますので、
中国全体としての経済成長の全盛期は殆ど過ぎ去り、
高度成長期もあと数年ぐらいのものだと考えます。
その後も、勿論ある程度の成長率を保つでしょぅが、
投資妙味という点においては
最高の投資対象と呼べなくなる時もいつかは来るでしょう。
と言っても、現時点で他の国の株を買うよりは
中国株を買っている方が断然魅力がある訳です。
それはやはり人民元という通貨に魅力がある事と
先進国にこれ以上の成長が見込めないという相対的な理由です。
そういう意味で、私が思うには、
今後数年の中国株の銘柄選択において
3つの選択肢があるように思います。
例えば、固定資産投資の伸びに連動するような株は
政府の景気対策の鉄砲玉が尽きれば面白くありません。
ですので、選択肢としての一つは、
中国政府が今後の国策として
投資を続けていくような業界への投資が挙げられます。
具体的には農業や環境や医療や水などの生活資源です。
ただし、これは個別企業の選択が難しいという難点があります。
そして、もう一つは特に都市部経済の成熟に関連して、
高付加価値的な内需関連業界への投資です。
具体的には一杯あって良く分かりません。
そして、最後は浅く広く農村部に浸透していく
内需関連業界への投資です。
これは、生活用品、食品、飲料、家電、
住居、自動車、ITなどです。
難しい事をいろいろ言いましたが、
中国株もいつかは日本の株式市場のように
右肩騰がりを続けられなくなる時がやってきます。
だからと言って、成長して
株価がどんどん騰がる企業がなくなる訳ではありません。
今後中国株をやっていく上で肝心な事は
成長していく企業をしっかり自分で見つけられるかどうか
という事ではないでしょうか。
猫も杓子も何倍にも騰がる時代は、
すでに終わったと見て良いと思います。 |