第276回
中国古陶磁器の未来
前回のおさらいで、
中国古陶磁器が持つロマンについてこのように説明いたしました。
1 まず焼き物自体が独創的。
2 まだまだ掘り出し物を手にするチャンスがある。
3 もし偶然、掘り出し物を手にできれば、
破格値で売れる可能性もある。
今回は、中国古陶磁器の専門的なコラムとしては
最終回となりますので、
更に具体的に「今後この業界がどのように発展していくのか?」
また「コレクターは
どのようなスタンスで収集を続ければ良いのか? 」などについて、
私の思う所を書いてみたいと思います。
まず、最初にどうしても言及しておかねばならないのが
「贋作」つまりニセモノとの戦いです。
昨今の中国の贋作技術の進歩には目を見張るものがあります。
自分で「もし偶然、掘り出し物を手にできれば、
破格値で売れる可能性もある」と書きつつも、
「素人にはまず100%あり得ない事」と考えている自分もいます。
当たり前の事ですが、
中国には有名な中国古陶磁器を焼いた窯場の跡地が
各地方にそのまま残っています。
という事は、土は本物と同じものが使えるという事です。
更に、経済解放後、本格的なニセモノや
倣品(各古窯場で過去の名品をコピーしたもの)が
作られるようになってからも数十年が経ち、
陶工の修練も進み技術の伝承が為されています。
上海や北京などの骨董店に入っても、
まず良質の中国古陶磁器に巡り会える可能性など
殆どないというのが現状でしょう。
ですので、コレクターはまず「本物はそうそう無いぞ」
という事を頭に叩き込んでおく必要があります。
だからと言って、お宝を探す事を諦めては前に進めません。
中国では、景気対策の為の公共投資事業として
広範囲に及ぶ鉄道工事などが活発に行われています。
1980年代にも鉄道工事で大量の中国古陶磁器が発掘されました。
今後、ますます素晴らしい古陶磁器が
発見される可能性が高くなっていくのではないでしょうか。
勿論、発掘品は当局によって厳重に管理されるでしょうが、
いつのまにか市場に出回るのも中国なのです。
では、そういうものをどうやって手に入れるか?
中国に住んでいる人に限定されるかも知れませんが、
まずは信用の置ける骨董店と付き合う事です。
数は少ないですが、いくつかあります。
常に情報を張り巡らせ、「良い物が出たらお金は出すぞ」
という雰囲気をプンプンさせておきます。
日々そのような接し方をしておくと骨董屋さんが
本当に良いものを見つけてくれるようになります。
そこまでやると、そのコレクターの収集品から
ニセモノが減っていき
最終的には素晴らしいコレクションが出来上がります。
しかし、余程の骨董好きでないとそこまではできません。
そういう場合、本物の古陶磁器を収集する為には
オークションを利用します。
中国では、国際的なオークションから
市民的な小さなオークションまで
多くのオークションが開催されています。
特に狙い目は小さなオークションです。
開催者も出品者もモノの正確な鑑定が出来ていない場合があり、
本物の有名窯古陶磁器を意外な安値で手に入れられる事が
稀にあります。
私はこれをよく利用していました。
このように熱心なコレクターは
良い品を追い求め続けていますので、
上質の中国古陶磁器の価格には常に上昇圧力がかかっています。
骨董はたまに発掘品があると言え、新しく生産できないものです。
つまり、需要に対して供給はいつになっても
追いつかない性質のものなんです。
すでに先進国では、骨董の価格はそれなりに騰がり
需要と供給のバランスがマッチしてしまい、
骨董の価格がどんどん騰がるという時代は終わりました。
しかし、中国ではこれから人々の所得が上がっていく所です。
中国人の陶磁器好きは日本人には理解できない程ですので、
今後の需要は増すばかりでしょう。
今ならまだ間に合います。
中国古陶磁器や中国骨董の優品を
がっちり買い貯めておきましょう。
それが中国株以上の値上がりをもたらす可能性も
十分あるのですから。
今後大きな値上がりが期待できる中国古陶磁器の狙い目としては、
「光緒期」や「道光期」など、
清朝後期の官窯作品の中でその出来栄えの素晴らしい品です。
且つ、ちょっと落ち着いたデザインが良いと思われます。
今はまだ、一目見てすぐ分るような緻密で
絢爛豪華な作品が好まれる傾向にありますが、
お金を持つ事により中国人の嗜好もどんどん変化していきます。
そうなれば、今はまだ人気のない日本人が好むような
地味な作品も評価されていくようになるのではないでしょうか?
いずれにしても、中国はまだこれから変化していきます。
そんな中で、中国古陶磁器を収集していく楽しみには
限りはありません。 |