伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第44回
鍼を怖がる人が多くって…

第40回のコラムで登場した
治療師の資格を持つドイツ人の女性は、
20年も前に資格を取った後も、
相当な情熱を持って休暇にはアジアを回り、
技術を体験したり、東洋の生薬を実際に求めたりしては、
自ら効果を確かめて学ぶツワモノです。
しかし、彼女はごく最近、治療院を閉じたのです。

私は私で、ドイツでたまたま、漢方薬と灸を
入手したいと思い方々の薬局やアジアショップを
訪ねてみるのにそれが思いの外、なかなか見つからない、
という散々な目にあっていました。
薬局のショウウィンドウには、
生粋の中医学を連想させる
派手なディスプレイが溢れているのに、
アジア人として期待する商品は、一向に手に入らないのです。

MOGUSA(灸)を探しているなら、
もう私は使わないので差し上げます、という申し出から
始まったご縁で、私は彼女に聞いてみました。

目下、フランクフルトは中医学ブームのように見えるのに、
今になって貴女が休業せざるを得ないのは何故?
「中医学はドイツ人にとって本当に魅力的だけれど、
本格的な中医学で治療を受けたいという患者の
絶対数はまだまだ、少ないのよ。
ホメオパシーの一環として
東洋の技術を持つ治療師になりたがる人は
相変わらず今でも多いんだけど。」

でも、特にあの鍼治療はドイツ人には、
スタイリッシュで、とても魅力的に見えるのでは?
「鍼治療は、ドイツ人にとって、本当に魅力的よ。
けれどねぇ、これを自分自身の身体に受けるのは別の話ね。
学校の講義では、中国から専門医が来て、
実際にモデルに施術しながら説明してくれた、
本当にエキサィテングな授業だったんだけど、
ある時、先生が生徒の前で、
「ハイ、私の施術を受けたい人、誰か手を挙げて!」
と聞いたときには、
あんなに目を輝かせて講義を聞いていた生徒が、
一瞬にして怖がって尻込みしたわよ。
皆で顔を見合わせて、笑い出してしまったわ。
鍼はすごいと認めるけれど、施術されるのは怖いと思う人が
ドイツにはまだまだ多いわね。」


←前回記事へ

2007年2月14日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ