伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第174回
「利益」と「プライド」を守るために

ドイツ暮らしのスタート条件が
良くなかったのです(165回)。
腰が重いながらも、何とか話の要点をまとめ、
改善要望を伝えなければ、と決心したのは、
ドイツに来てもう2年目の晩秋でした。
もしも、あの時にそうしなかったら、
今、こうやってドイツ通信を書かせていただく
どころではなかっただろうと思います。

個人の要望を手探りで通そうと試みることによって、
生まれて初めて、「欧州人とは何者か?」ということを
痛い思いをして知ることになりました。
平和ボケした日本人の馬鹿正直さで、
余りにも真っ正面から話をしすぎたのです。

一見、のんびり、ゆったり、
贅沢に過ごしているように見える欧州人。
彼らが一体、どれほど高いプライドを持って
どれほど必死に生き抜こうとしているのか、
日本の中から想像するのは難しかったのです。
これを嫌というほど思い知りました。
昨日まで親切でにこやかな笑顔を
振りまいていた周りの欧州人が、
その自己の「利益」と「プライド」を守るために、
猛然と七変化する姿を包み隠さず、
私は「見て」しまいました。

牙をむくように本気で怒った姿、
大人気ない小賢しい振る舞いをする幼稚な姿、
ただひたすらに感情的に怒り狂う姿、
そして、急に手のひらを返したように
一瞬にして状況に合わせ都合よく行動する姿。
そして、心奥深いところにある、
情け深い人情溢れる姿…など。
そういう誰もが持っている醜いものも、
持っていても、互いに見せ合うことが少ない
心の奥の素晴しいものも、「見て」しまいました。

この人間、それぞれ、誰もが必ず持っている
「利益」と「プライド」に掛けたぶつかり合いは、
欧州では「激しく火花を散らす」火性のものです。
日本にある「ジメジメした」印象の
水性のものではありません。

この経験の中で、欧州独特の炎のように激しい、
人間同士の物の見方や考え方のぶつけ合いのスタイルに
少しずつ気がつくようになったのは幸いでした。
そうでなければ、フェアな勝負をしようと
相手がせっかく試みてくれているのに、
「意地悪されている」、「差別された」などと
勝手に勘違いして、
さっさと退散していたかもしれません。


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2007年12月14日(金)

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