伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第175回
ドイツ人とはケンカをするな

周りのドイツ人の子どもや大人の
ちょっとしたイザコザや小さな取っ組み合いを
ぼんやり傍観しているうちに
振り挙げた怒りのコブシの下ろし方が
ドイツ人と日本人では、どうも違うんじゃないかと
思うようになりました。

ドイツの場合では、大人も子どもも、
振り上げたコブシがなかなか降りないのです。
日本では、コブシを振り上げるフリをしていても、
ゴメンと言いつつ、
相手との五分五分の決着点を暗黙に探って、
さっとコブシを下ろすことを
真っ先に考えていたように思えます。

そういう理由で、ドイツ住まいが長い人に、
「ドイツ人とどうケンカすれば勝てるの?」
と聞きまわった時期がありました。
別に誰かとケンカしたいのではなくて、
ドイツ流ケンカの「流儀」を知っておきたかったのです。

大抵の人の答えが、よく日本で聞くとおり
「ごめんなさいと言うな」でした。
しかし、それではもう少し意味が釈然としないのです。
「ごめんなさい」と言わない代わりに
「では、どうすればよいの?」という点について、
日本の中では真面目に考え、
議論する機会がありませんでした。

しかし、その後「ドイツ人とはケンカするな」
という名言を聞きました。
実はこれ、とても役立つ言葉なのです。
「欧州人とはケンカするな」と私が少し拡張して、
「まず、差別されたと思うな。
相手は分からないと思え(第125回)」
に続く第2の私の欧州住まい金言としています。

ドイツでは、一度、コブシを振り上げたからには、
永遠に「振り上げたまま」になります。
万が一、そうなってしまえば「話し合い」をして、
もう絶対に「折り合う」どころではありません。
話し合いができるような相手ならば、
最初からケンカする必要は無いのですから。
徹底的にコブシを振り上げたままの
ケンカに時間を費やす暇があるならば、
「最初から可能な限りケンカを避ける」ことに
知恵を使ったほうがずっと利口です。


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2007年12月17日(月)

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