服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第449回
ライダーズ・ジャケット愛好家への手紙

今回は、日ごろご愛読下さっている
読者のJ.K 様から
メールをいただきましたので、
ご返答を掲載させていただきます。


■J.K 様にいただいたメール

前略
いつも愉しく拝見しております。

いつぞやは下駄についての駄文を
取り上げていただき、ありがとうございました。

私は現在「ショット」のシングル・ライダースを愛用しております。

それにしても、重量指向というのは面白い考え方ですね。
私の場合は、バイクに乗るときのことを最優先してます。
冬場に重ね着できる程度の余裕を持ちつつ
高速走行時にバタつかず、転んでも大丈夫そうなもの
といったところでしょうか。
結果的には重量指向といえるのかもしれません。

単車に乗るなら馬革の方が丈夫でよい、
とベテランのバイク乗りから聞いたことがありましたが
たしか値が張るのであきらめたような気がします。

「手塩にかける」というのも
今まで考えたこともありませんでした。
少しずつ取り組んでみようと思います。

これからのますますのご活躍、ご祈念申し上げますとともに
厳寒の折、くれぐれもお身体、ご自愛下さい。
草々

追伸:
冬場はどうしても首から冷えます。
カッコよくて、排ガスで煤けても自分で洗濯できるもので
何かよいものはありますでしょうか?
ご教授、よろしくお願いいたします。

J.K


■出石さんからのA(答え)

いつもお目通し下さり、
ありがとうございます。
また、ご丁寧にもお便りを頂きましたことにつきましても、
重ねて御礼を申上げます。

J.K様はバイク好きのようですね。
私がバイクに乗っていたのは、
はるか遠い昔のことです。
今の、モータサイクル・ウェアについては
まったく知識がありません。
なんともお返事のしようがない、
というのが正直なところです。

でも、「ショット」schottの革ジャンパーについては、
もちろん聞いたことがあります。
事実、ショットの、革製の、ウエスタン・ジャケットを
愛用しているほどです。
ショットはレザー・ウェアのみならず、
ピー・コート(アメリカでは“ピー・ジャケット”という)の
メーカーとしても知られています。

「ショット」の創業は1913年といわれているから、古い。
アーヴィング・ショットがその年に、
ニューヨーク州ではじめたものです。
ただしその頃すでに今のような
ライダーズ・ジャケットを作っていたわけではありません。
それというのも、現在の、ファスナーが斜めに走った
ライダーズ・ジャケットが登場するのは、
1939年頃だと考えられているからです。

そのデザインは“エイヴィエイター・モデル”と呼ばれた。
飛行服をヒントにした革ジャンパーだったからです。
狭い操縦席で右手を動かすために
都合が良かったのでしょう。
そして初期のモーターサイクル・ジャケットには、
多くのホース・レザー(馬革)が使われ、
しだいにステァハード(仔牛革)へと移ってゆくのです。
もっともその頃は
“パーフェクト”PERFECTOがブランド名で、
ショットは社名となっていました。
馬革製のライダーズ・ジャケットは
たしかに厚くて丈夫ですが、
身体にすっかりなじむには、2、3年はかかります。
まあ、これも好みの問題でしょう。

ただ、ひとつだけ言えることは、
あのライダーズ・ジャケットのデザインは、
機能的からも後世に語り伝えられることでしょう。


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