服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第598回
「永遠のマイ・スタイル」

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
タケマツ 様から
第596回 1ダースならおしゃれになれるについて
感想メールをいただきましたので、
そのご返答を掲載させていただきます。


■ タケマツ 様にいただいたメール

件名:同じ物を1ダース

おはようございます。
いつも楽しく拝見しております。
ファッションだけでなく、
美味しいものも紹介していただけるのが
最近うれしいです。

以前、三つボタンのスーツのお話の時
私の文章をHPに載せて戴きありがとうございました。
本日の、同じ物を1ダース買うことが、
わたしもあります。
それは、趣味のテニスで使う、
テニスソックスです。

これは、ナブラチロワという
女子選手が使っているという話を聞いて、
買い求めた物ですが、
耐久性、クッション、吸湿性など申し分なく、
この前数えてみたら、ちょうど1ダースありました。
色は白、長さも全て同じです。

同じ靴を履いているとすぐ傷むという話は、
私も経験があります。
靴下は、毎日同じ物を履くことはありませんが、
右足と左足では、靴で傷み具合が違うように、
靴下も傷み具合が違ってきます。

しかし、1ダースも同じ靴下を持っていて、
ローテーションをすると、
なかなか靴下はだめになりません。
気に入ったスーツを1ダース作ったという、
アメリカのフォード社長の話を聞いたことがありますが、
スーツまでは、手が回らないわたしでも、
靴下なら大丈夫です。

ではまた。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さり、
ありがとうございます。
また日頃、お目通し下さっていることにつきましても、
心よりの感謝を申上げます。

ナブラチロアの話、
テニス・ソックスの話
まったく知りませんでした。
テニス・ソックスに限らず、
靴下をすべて同じものを揃えるのは、得策です。
仮に片方に穴があいても、
丸々一足捨てなくとも済むからです。
それからたしかに交互にゆっくりと履くのは、
永保ちするものです。

白洲正子の『白洲正子自伝』に出てくる英国人、
ロビンの話を知っていますか。
白洲次郎の親友で、
ストラットフォード伯爵という貴族。
白洲次郎とはケンブリッジ大学の
「クレア・カレッジ」で知り合って以来の仲だと
紹介されています。

白洲正子、このロビン氏について
ひとつ不思議に思ったことがある。
それはこの人物がいつも同じ服を着ているから。
ピン・ストライプのスーツに、
同じシャツと同じネクタイ。
正子が次郎に訊く。と、
「あいつは新しい洋服を着ているように見られるのがいやで、
 同じものを1ダースは作るんだよ。
 それを毎日取替えるから
 いつでもちゃんとしているんだ」
と答えたのだそうです。

なるほど英国貴族のおしゃれとは、
そういうものかも知れません。
しかし、ここでもうひとつ大切なことは
自分の、不変のスタイルを持つ、という点なのです。
同じシャツを1ダース作ることは、
それほど難しくはありません。
でも、毎日毎日その同じスタイルのシャツを着るわけですから、
アキが来るようでは困ります。
最先端の流行というのも論外でしょう。
時と場合によっては
自分の分身にもなってくれるわけですから、
適当に選ぶことは出来ません。

自分が本当に、いつまでも納得ができる、
マイ・スタイルでなければなりません。
そしてこのように、
不変の、永遠のマイ・スタイルを持つことが
真のおしゃれではないでしょうか。


←前回記事へ 2004年6月4日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ