服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第806回
白足袋のエレガンス

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
山下 宏 様から
「男の着物」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■山下 宏 様にいただいたメール

件名:男の着物について

出石 尚三 さま、
はじめまして、山下 宏と申します。
男50歳です。神奈川県在住です。

「男はカッコ」を
いつも楽しく拝見させていただいております。
早速ですが、祖父の影響か、
数年前から50歳になったら着物を着ようと思い立ち、
昨年来着物を楽しんでおります。

着付けは独学で色々試していますが、
知識が高まるたびに
着物の世界の暗黙のルールは
守らなければいけないかな、と思い始めました。
全て自己流ですので、
自分の気に入ったスタイルで着付けていますが、
現在、気になっているのが襦袢の襟と足袋の色です。

私は白が好きです。
理由は、なんとなくなのですが、
色がついていると野暮ったく思えるからです。
特に黒足袋は好きではありません。

男の場合、あらたまった席以外は、色襟に色足袋、
というのが一般ルール(通念)のようですが、
私のような勝手な着こなしは、
本当にいいのか気になっております。

出石さんはご自身のコラムの中で
白足袋を勧めていらっしゃいますので
私には心強いのですが、家内や友人など普段、
男に白足袋はちょっとおかしくない?
という意見があります。
普段、男が白襟、白足袋で出歩くことは、
伝統のある着物の世界では、やはり控えるべきか・・・

最近時の状況も鑑み、
再度ご意見をいただければ幸いです。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にお便りを下さり、
ありがとうございます。
また日頃からお目通し下さっていることにも
感謝申上げます。

どんな洋服でも、
着物にはちょっとかなわないところがあります。
着物はたいていの場合、
上質の絹織物であるからです。
シルクのスーツは少し気障ですが、
着物は優雅そのものです。
しかもその生地だけを眺めても、
ちょっとした芸術品と言いたいところさえあります。
もっともっと着物に親しみたいものです。

足袋はワイシャツと似たところがあります。
もともと白ワイシャツは紳士用であり、
紺をはじめとする色シャツは
労働者用とされたものです。
かつて“ブルー・カラー”という言葉が使われたのは、
ご存じの通り。

たしかに白足袋には
礼装用という印象があります。
が、さらに古くは貴族用であったのです。
今、おしゃれ着用として着物を着る場合、
白足袋を合わせてもまったく問題ありません。

もしどうしても組合わせを気にするなら、
着物より履物でしょう。
下駄に白足袋はどうなのか。
私なら白足袋は雪踏や草履に合わせたい。
少し極端な例ですが、
私は夏、浴衣に白足袋と雪踏を合わせることさえあります。
けれどもこれがもし下駄であったなら、
いっそ素足で履くでしょう。

子供の頃、冬になると
色物のビロードの足袋を履かされたものですが、
なぜか私には野暮ったく感じたことがあります。
同じベルベッドでも上着になると大好きなのですが、
不思議なものです。
あるいはフィット感が
嫌いだったのかも知れません。

白足袋はどんな着物にも合わせられます。
ただしゆとりのありすぎる足袋は
粋ではありません。
あくまでも純白なものを、
それこそ足指に食い込むように履くのが
おしゃれなのです。

坂本龍馬は着物にブーツを履いたそうです。
もっと心を広く、自由な発想で着たほうが、
着物の未来も拡ってゆくのではないでしょうか。


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