服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第911回
強気のタイと内省のタイと

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
shigeo kakudou 様から
「ナロー・タイ」について
コラムを書いていただけませんかと、
リクエストのメールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ shigeo kakudou 様にいただいたメール

件名:ナロー・タイについて

出石先生へ。

「第904回レジメンタル・ストライプの謎」拝読致しました。
関連記事を送付致しますので、
最近街でちらほら見かけるナロー・タイについて、
先生の視点からコラムを書いて頂けたら幸いです。

※ 資料出典 2003年6月6日 日本経済新聞「モードの方程式」より


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さり、
ありがとうございます。
また参考資料を
お送り下さいましたことにも、
重ねて御礼を申上げます。
「モードの方程式」
興味深く、拝読させて頂きました。

たしかにネクタイについて
気になることのひとつに、幅があります。
幅の広いタイもあれば、細いタイもある。
そしてまた大きな目で眺めるなら、
細いタイから広いタイへ、
あるいは広いタイから細いタイへと
ゆっくりと動いているのです。

今、たわむれに
私自身のタイを測ってみると、約10センチ。
9.5センチもあれば
10.5センチもあるというわけです。
このわずか10ミリの間で、
太いだろうか細いだろうかと、
心中深く悩んでいることになります。
ついでながらネクタイ幅は
大剣の両端を測ることになっています。

ではどうしてその時どきによって
細いタイがあったり、太いタイがあったりするのか。
それは一般に上着の襟幅と関係があるとされます。
ワイド・ラペルにはワイド・タイ、
ナロー・ラペルにはナロー・タイというわけです。
これは男のVゾーン構成上
ごく近い位置にありますから
当然のことでしょう。
同じように小さなシャツの襟には小さな結び目、
大きな襟には大きな結び目がふさわしいわけです。
ラペル、カラー、タイ、
この3つの大きさ(幅)はほぼ連動しているのです。

第二次大戦直後のアメリカで、
“ボールド・ルック”が流行ったことがあります。
端的に男らしさ、強さを強調したスタイル。
これは時代の情況や経済とも無関係ではありません。
一般に強気が良しとされる時代には
ワイド・タイが流行り、
内省的な時代にはナロー・タイが流行る、
と考えて良いのではないでしょうか。

一方、なかにはかつての
フランク永井さんのように、
いつの時代にもナロー・タイという人もいます。
「私のネクタイの幅は何センチ」と
決めているのもまた
おしゃれなことでしょう。


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