第294回
泰山の屈強な民工たち
昨日・一昨日(前回・前々回)と
世界自然・文化遺産である泰山に登っています。
夜間に泰山を登り切り、
日の出を拝んだ後に下山すると、
明るく照らされた泰山の美しさに
心打たれることでしょう。
さて、登山客が登山の達成感、
ご来光や日に照らされた泰山の美しい景観に
酔いしれているのもつかの間、
驚くべき光景が目に飛び込んできました。
標高1500mを越す泰山には、
麓の辺りから斜面・階段が急な頂のすぐ近くまで、
山道のあちらこちらに
数多くの売店が点在しています。
そうした各売店への物資のロジスティクスには、
中国の昔ながらの手法が用いられていたのです。
荷物を担いだ民工です。
日本の富士山などには、
麓から山頂まで裏道からショベル・カーなどで
多くの物資を運ぶ運搬路が整備されています。
しかし、ここ泰山では、
食料や建築材料など多くの物資が今なおこうして
人力で運ばれているのです。
登山をしている最中は、
少しの荷物でも「いやー、辛いなぁ」と感じるものですが、
彼ら民工の荷物の容量と比べたら、
「登山遊び」の域を出ないものだと感じられます。
下山するまでに、こうした多くの民工と
すれ違うのですが、中には60キロを越す荷物を
運ぶ民工もいるほどです。
60キロといえば、
人間を一人担いで山登りしているようなものですが、
こうした中国の貧しい民工たちの身を削る働きのお陰で、
お金のある人々は山登りの楽しみを謳歌できるのです。
軽い手荷物で登山を楽しめる人々と、
僅かな手数料のために過酷な重労働をする民工。
中国の光と影がここにも見て取れます。
|