「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第57回
風俗街で江戸前鮨

不忍池の南、中央通りと昌平橋通りを結ぶ上野仲通り。
風俗店がひしめいて、呼び込みボーイズに
まとわりつかれること必至のストリートだ。
そんな中で老舗の食べもの屋も散在、
蕎麦の「蓮玉庵」に「池之端藪蕎麦」、
おでんの「多古久」などが
昔と変わらぬたたずまいを見せている。

仲通りの中ほど、春日通り方面に曲がってすぐ右側、
「鮨一心」がこの界隈としては
ちょっと場違いなくらいに、小粋な雰囲気を漂わせている。
5年前の初回以来、久々の再訪だ。
前回は独りで訪れ、親方の真ん前で
同伴のカップル2組に挟まれながらの手酌酒。
左右から流れてくる会話を聞くともなしに聞いていた。

ビールの品揃えは生も瓶も
モルツのスーパープレミアムのみ。
どうしてこういう暴挙に走るのだろう。
異なるタイプを最低2種は取り揃えてほしい。
仕方なく生を1杯。即刻、芋焼酎の霧島に切り替える。

突き出しは油で揚げたふっこの甘酢あんかけ。
つまみは珍味ばくらい(ほやのこのわた和え)と
最近はトンと見かけることの少なくなった蝦蛄だ。
江戸前小柴産は禁漁中につき、産地を訊ねると、
香川県の観音寺産、いわゆる瀬戸内モノであった。
腹に子を持たないのを選んでもらい、
3尾ほどわさびと煮つめでやり、
江戸前には及ばぬものの、じゅうぶんに満足。

続いてにぎり。ちょうど9カン食べたので
再びゴルフの9ホールに見立ててみた(第41回参照)
鮨種のあとの記号は
バーディー…○ パー… ボギー ダボ…

(1)新いか…○ (2)黒みる貝… (3)甘海老…
(2)小肌…  (5)酢あじ…   (6)蒸しあわび…
(3)生いくら…(8)赤身…−    (9)穴子…

              計1アンダー

旬を迎えた新いか以外は
これといって傑出したモノはなかった。
本みるともいわれる黒みる貝は
バーディーパットがボール1つぶんショート。
芝海老のおぼろをカマせた小肌。
大葉を忍ばせて、すだちを搾った酢あじ。
塩蒸しに海苔の帯、煮つめを塗って、肝を乗せたあわび。
ほどよい酸味で熟成感のあるまぐろ赤身。
それぞれに惜しいが、結局はパー止まり。
それでもボギーを叩かないのは立派だ。

江戸前鮨の水準が銀座・浅草に比べて
見劣りする上野・湯島では天神下の「喜八」と並ぶ優良店。
予算は1人アタマ12000円。

 
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2006年9月19日(火)

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