「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第190回
古き良きベルリンのデカダンス (その1)

新橋のすき焼き屋「今朝」については
つい先日ふれた(第174回参照)
その「今朝」と同じビルの1階部分、
入り口はすぐ左隣りになるのだが、
「ビストロ・ベルラン」なる歐州料理店がある。
欧州ではなく、歐州であるところがミソ。
ベルランはドイツの首都・ベルリンの仏語読み。

この店のホームページを開いてみると、
旧漢字に対するこだわりは相当なもので
予約→豫約、会話→會話、販売→販賣、中国→中國、
独逸→獨逸、発音→發音、気軽→氣輕、価格→價格、
一事が万事、こういった具合なのだ。
クラシカルな事象への思い入れは並々ならぬものがある。

一夜、3人連れ立って訪れた。
店内の雰囲気は古き良き時代の
ベルリンをイメージさせる。
確かに時間が止まっているような空間。
あの時代のベルリンを舞台にした映画となると
すぐにライザ・ミネリの「キャバレー」が思い浮かぶ。
どことなくイメージが重なる気がしないでもない。

店内にはデカダンスの匂いも漂っている。
映画の舞台をベルリンから
「愛の嵐」のウイーン、あるいは
「暗い日曜日」のブダペストに転じても
店にはむしろこの2本のほうがしっくりくる。
とりわけ「愛の嵐」のダーク・ボガードと
シャーロット・ランプリングの2人が
夜更けに会話の少ない食事をしていたら
最高の絵になることだろう。

エビスの小瓶のあと、せっかくベルリンの名を
冠している店に敬意を表してドイツ産の赤ワイン、
トラウトヴァイン・カイザーシュトゥール’04年を。
セパージュはシュペートブルグンダー、
これはピノ・ノワールとまったく同じ。
豊かなブーケを持ち、飲み口もスッキリと
これで6300円はCPが高い。一同満足。

3人で1本ではとてもたりず、ハーフボトルを1本追加。
今度はフランスのピノ・ノワールから
ジョルジュ・デュボンのサヴィニー・レ・ボーヌ’02年を。
これまた軽いタッチのなめらかさ。
こちらが3150円と、実質は2本同値と相成った。

ディナーは前菜・主菜で4800円のコースが主体。
それぞれ5〜6種類ほどの皿から
チョイスするシステムで1皿増えるごとに
1200円が加算されることになる。きわめて単純明快。
協議の結果、トータルで8〜9皿を
やっつけようということになったのだが、
ギャルソン君にどの皿もそれぞれに
かなりのボリュームがあるからと諌められ、
結局は前菜4皿、主菜3皿ということで落ち着いた。
それほどの量を食べられないくせに
あれも食べたい、これも食べたいの
持って生まれた卑しさは
いくつになっても消えるものではない。

         =つづく=

 
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2007年3月23日(金)

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