「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第318回
皇后陛下と観る「ばらの騎士」

京都からやって来た友人に誘われて
渋谷のオーチャードホールに赴いた。
チューリヒ歌劇場の来日公演は
R・シュトラウスの「ばらの騎士」。

このオペラは1994年のウイーン国立歌劇場東京公演以来。
このためにニューヨークから2日間だけ帰国した。
何とかチケットを入手し、どうにか日程を調節したのも
ひとえに指揮者のカルロス・クライバーを
観ておきたかったからである。
「こうもり」のビデオ映像に心を奪われてしまい、
いつか生で観たいという夢がやっとかなったのだった。

さて、その夜の公演。
全三幕のうち、目にも耳にも楽しい第二幕が終わり、
幕間に外に出て冷たいビールを飲んでいると
ヤケに周りの空気が物々しい。
ほどなくクルマで到着されたのは皇后陛下であった。
夜遅くにお独りで観劇にいらしたのだった。

陛下がご覧になった第三幕は
ドタバタの度が過ぎてしまったが
音楽的には申し分がなく、、陛下もご満足のご様子。
度重なるカーテンコールが終了するまで
席を立たれることはなかった。
これには当夜の聴衆も大感激。
京都からの友人もご満悦だ。

オペラがハネたのは10時すぎ。
夕食を食べていないので、お腹はペコペコだ。
こんな時間に渋谷界隈ではロクなものは食えない。
一計を案じて、神保町の「やまじょう」に電話を入れる。
そろそろ店仕舞いのところをムリを聞いてもらった。

ビールで乾杯のあとは芋焼酎・島美人に直行。
こんにゃくの削り節和え、ポテトサラダを皮切りに
小いわしの煮付け、ニラ玉豆腐を。
いわしが東京風の濃い味付けにもかかわらず、
京都の友人は「美味しい!」を連発しながら食べている。
切干し大根の豆板醤和え、牛肉と大豆の炒り煮も
お気に召した様子で一安心。
東京には珍しいおばんざいスタイルが功を奏したようだ。

そう言えば数年前、皇后陛下のご生家の
取り壊し論議を盛んに耳にしたもので
見おさめにと、東五反田に出掛けて行ったことがある。
ヤシの木がアクセントの生家を眺めていて
概視感にとらわれたのだが、間もなく思い出した。
目にしたどころか、中に入ったことがあったのだ。

今をさかのぼること二十数年前。
正田家で催されたパーティーの席。
もとより招待されるわけはなく、
サービス係としておジャマしたのだった。
当時はホテルでアルバイトをしており、
そのケータリング・サービスに赴き、
ご尊父にウイスキーの水割りをお作りもした。

と、ここまで書いて訃報が飛び込む。
長嶋亜希子さんが突然亡くなられた。
ちょうど正田家のパーティーがあった頃、
五木ひろしのディナーショーで
長嶋夫妻のテーブルを担当したことがある。
牛フィレステーキに添えられたクレソンを
つまんだ亜希子さんの白い指を今も忘れない。
(第86回参照)

 
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2007年9月19日(水)

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