「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第345
花街の母の味 (その1)

花柳界がほとんどすたれてしまった東京で
唯一なんとか体裁を保ちつつ、
そこで遊ぶ客を楽しませてくれるのは
もはや向島だけではないだろうか。

向島のラーメン居酒屋「らん亭」(314回参照)
バッタリ出くわした「料亭きよし」の三代目と
久々に一献傾けることとなって
日曜日の夜、花街に出掛けて行った。
行く先は三代目の中学の後輩が
オフクロさんと営む「秀寿司」である。

相変わらず殺風景な押上駅で待ち合わせ。
新東京タワーが着工するまで
この景色が変わることはない。
三代目のクルマでまっすぐ料亭街に向かった。
今宵の面子はわれわれ2人のほかに
それぞれの同伴者が1人ずつ。
あちらは小唄の名取りのS月さん。
こちらが出版社勤めのM喜ちゃん。

カウンターに横並びの4人はまずビールで乾杯。
BGMはS月さん自身のCDだ。
いきなり吉原百人斬りの「花街の酔醒め」で始まった。
う〜ん、いいノドをしている。
チントンシャンと
雰囲気は否が応でも高まってきた。

30代後半とお見受けの親方が出してきた
初っ端のつまみは、新いくらの醤油漬け。
その下にはきざんだ漬け生姜と酢めし。
飲む前に、腹に少々溜まるもので
胃をガードしようという鮨職人の親心である。

穴子の肝の煮たのが1片だけ出た。
このおかげで日本酒がほしくなったが
取りあえずビールのあとは芋焼酎にしておく。
銘柄は、からり芋。黄金千貫100%の本格派である。
これをロックで3杯ほどやった。

当夜の白身はあずきはた。
はたは大好きなサカナだ。
もっとも一番旨いのは中華料理の清蒸なのだが、
和食でもじゅうぶんに、その魅力を発揮する。
まず、あずきはたのアタマの煮付けが登場。
思わずうなる目玉とほっぺたがたまらない。
亡くなったオフクロの煮魚によく似た味付け。
男性陣にはアタマが出され、
女性陣にはより食べやすいカマが出る。
キレイどころは2人揃って未経験の美味にニッコリ。

続いて、同じあずきはたの薄い切り身で
芽ねぎをクルリと巻いたもの。
これは粗塩とすだちでいただく。
わさび醤油とは、また違う繊細さが浮き立った。
死後硬直が解けて、ちょうどよい噛み応え。

真だこ桜煮も上々の出来映え。
ソフトタッチに仕上がって
まったりとした滋味が舌の上に拡がった。
やや小さめで粒よりのばふん海胆はさすが!
ばふんは小粒でキリリと旨い。
まだまだ続く花街の酒宴である。

         =つづく=

 
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2007年10月26日(金)

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