「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第381回
売り切れご免の焼きトン屋 (その2)

祐天寺の焼きトンの人気店「忠弥」に来ている。
焼きトンの前のもつ煮込みに
いきなりガツンとやられてしまった。
出会いがしらの強烈な必殺パンチ。
小川ローザなら「オーッ、モウレツ!」と
叫ぶところだが、そこは歴戦の雄、
そのときJ.C.少しも騒がず。

でも心の中には波が立っていた。
他店の煮込みとはルックスからして全然違う。
桐山部屋の塩ちゃんこ(第378回参照)のように
透き通った煮汁がシルダクとなっている。
ちょうど煮込み鍋の真ん前に座ったので
のぞいてみると、女将さんが丁寧に
浮いてきたアクと余分な脂を取り除いている。

これには豚と牛のホルモンが
いい塩梅でミックスされていて
ホルモン自体もさることながら
煮汁のほうも飲み干さなければ
気が済まないほどの滋味に満ちている。

茄子・きゅうり・にんじん・大根のぬか漬けと
生のピーマンを箸休めにもらっておいて
いよいよお待ちかねの焼きトンの始まり、始まり。
この店では単に塩とタレだけでなく、
醤油・スタミナ・塩ニンニクなんてのもある。
スタミナというのはいろいろ配合した特製のタレ。

1本目はヒモ(大腸)のスタミナ。
もつ焼きの王道で、いわゆるシロ。
クチャクチャの噛み応えを楽しむ。
ここでキリンの生から
一番搾りのスタウトの小瓶に移行する。
この店では取り扱うビール類は
あくまでもキリンにこだわっているようだ。

チレ(脾臓)もスタミナ。
この臓物の食感はもつの中でもっとも個性的。
柔らかいようで、歯を入れると、抵抗感があり、
なおも噛み込んでやると、再び柔らかい、
としか表現のしようがない。
ハラミは塩ニンニクで。
ニンニクのせいか、
ブルゴーニュ風エスカルゴの味がした。

早くもスタウトを飲み終え、
今度は「忠弥」自慢のカクテル。
下町の電気ブランハイに似ているが、
ウィルキンソンのジンジャーエールを加えるので
太宰治や坂口安吾が通った銀座のバー、
「ルパン」のモスコーミュールを偲ばせる。

続いてテッポウ(直腸)はタレ、レバーは塩、
そして牛の匂いもして、
片栗粉のトロミも感じるツクネも塩。
フレンチではリードヴォーと呼ばれる
仔牛の胸腺肉は、もつ焼きではシビレという。
ここで初めて醤油で来た。
この醤油が味付け的に、もっともしょっぱい。
仕上げはナンコツをもう一度、醤油で。

大満足で食べ終えてのお会計は
お二人様1万と400円でありんした。
三代目は店があるので、ハシゴはせずに
二人揃って、下町に戻りましたとサ。

 
←前回記事へ

2007年12月17日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ