「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第396回
「梅寿司」の甘抜きちらし

昨秋の欧州旅行から帰国したその夜。
帰宅して旅装を解くヒマもあればこそ、
シャワーを浴びながら、
どこで帰国第一食を取ろうかと思いをめぐらせた。
時間も時間だし、近所の「梅寿司」に
駆け込んだのだった(第341回参照)

年末に再び「梅寿司」を訪れた。
仕事のトラブルで遅れてくる友人を待つ間、
ビールの大瓶をカラにした。
突き出しは塩茹での天豆。
さすがに何かつまみがほしくなり、
煮はまぐりと煮穴子を頼んで、煮モノの連荘だ。

あぶって出された煮穴子は、そのまま半分食べ、
残りには煮ツメをもらった。
昔ながらの下町の鮨屋は
煮モノとひかりモノが充実していてうれしい。

菊正の樽酒を熱めにつけてもらい、小肌をつまみで。
その夜の小肌は普段より塩が勝っていた。
燗酒にはこれでよいが、ビールだったら
もうちょいと酢に主張してほしいところだ。

海老すり身入りの玉子を追加したときに
下町生まれ、下町育ちの友人、Mちゃんが現れた。
この人の顔は少々、たこに似ているので
ふと思い出して、たこの桜煮をお願い。
酒に弱いMちゃんは熱い緑茶を飲み干し、
お好みのにぎりをつまみながら
熱燗をつきあってくれたが、
お猪口に2〜3杯で早くも、顔は茹でだこ状態。

こちらもにぎりに移行する。
当夜は2階の座敷で宴会があり、鮨種は不足気味。
特に白身は壊滅状態で、何も残っていない。
仕方なく、小肌・〆さば・煮いかとにぎってもらう。
合間にはさむ漬け生姜が特筆だ。

品書きを目にして常日頃から気になっていた
甘抜きちらしをこの際、見ておきたくなった。
煮モノ満載の通常のちらしは食べたことがある。
甘抜きというからには、穴子・はまぐり・しいたけ・
かんぴょう・玉子などを一切外したものだろう。
Mちゃんは酒を得意としないが
ごはんは得意中の得意、その甘抜きちらしを
食べてもらうことになった。
並と上があるうち、魚介の種類が多い上を注文。

普段ならこれに白身が加わるのだろうが、
甘抜きちらしの内容はかくの如くであった。
まぐろ赤身・小肌・ぶり・墨いか・
赤貝・帆立・小柱・いくら
すべて生モノで構成され、
きゅうり・たくあん・奈良漬さえも見えない。
小肌以外は、江戸前シゴトの対極にあるが、
今の世の中、このほうが客受けはよさそうだ。

小粒のばふん海胆が見るからに上物。
にぎりでお願いすると、
コクがあるのにスッキリとしたあと口。
もしもこの海胆を甘抜きちらしに入れたら
その時点でもはや甘抜きにはならないと
思われるほどの甘さが際立った。

 
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2008年1月8日(火)

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