「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第462回
スズメと分け合う屋上の昼食

とある日曜日。
この日はいろいろな催し物があって朝から忙しい。
パソコンに向かい、一仕事済ませたら
10時前に家を出て開店間もない日本橋三越に到着。
目覚めてから何も口にしていないので
まずは地下の食料品売り場に直行する。
弁当でも調達してブランチというか、
早めの昼食というか、腹ごしらえをする腹積もりだ。

いろいろ物色する前に、たまたま和菓子売り場の
隣りにあった「日本橋弁松総本店」の弁当に目が留まる。
歌舞伎座の真ん前の「辨松」(397回参照)と
源流を同じくしながらも今ではたもとを分かって
日本橋本町に本店を構える老舗のものだ。
とはいうものの、両者の調製する弁当は
見かけも味も瓜二つ、初めての人なら食べ比べても
違いが判らないのではなかろうか。

この日は友人のK石クンの
小唄の晴れ舞台を三越劇場で観賞後、
13時から小石川植物園で今年最後の花見の予定。
中途半端な時間に飲食をダラダラと続ける一日になるので
「弁松」の弁当は一番小さいのを選ぶことにした。
その名を白詰弁当といい、金840円也。

屋上に上り、自販機でおーいお茶を買い求め、
いそいそと包みを開く。
見覚えのある内容は、
かじき照り焼き・かまぼこ・玉子焼き・
煮物(黒胡麻入りつみれ・つと麩・竹の子・しいたけ・
蓮根・絹さや)・生姜のたまり漬け・青小梅・ごはん。
玉子焼きと煮物がやはり強烈に甘い。

弁当を半分ほど食べ進んだ頃、
どこからともなくスズメが5〜6羽舞い降りてきた。
ずいぶんと人馴れした愛嬌モノもいて
手が届きそうな距離まで近づいてきては
こちらを眺め、小首を傾げている。
ハトやカラスと違い、なかなかに可愛い。
彼らのお目当ては言うまでもなく弁当だ。

一番近くにやってきたスズメに
ごはんの小塊を投げ与えると、さあ大変。
あとは寄ってたかって米粒の奪い合いとなって
文字通り、欣喜雀躍の光景が眼前に拡がった。
人間を恐れずに度胸と愛嬌を兼ね備えたスズメが
エサにありつけるのは実にことわざのまま。
「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」の如くに
「人前に進まざれば、好餌を得ず」なのであった。
いつの間にか群れは十数羽に増えている。
ごはんの半量をスズメたちに分け与えてしまった。

劇場に赴くと、ロビーで栄芝のお師匠さんにバッタリ。
「あらアンタ、よく来たわネ、
お弁当上げるから、ちょいといらっしゃいヨ」
誘われるままに楽屋におジャマして
いろいろ詰め合わさった「福袋」を頂戴したが
ズシリとくるけっこうな重さだ。
まこと、持つべきものは師匠なりけり。

K石クンのみならず、かっての兄弟子たちのノドを楽しみ、
いざ花見に向かわんと「福袋」の中をのぞいてのけぞった。
師匠の最新盤CDやみやげのお菓子に混じって
鎮座まします弁当はなんと、「弁松」のそれではないですか。
それもこちらは、高級版の二段弁当でありましたとサ。


【本日の店舗紹介】
「日本橋弁松総本店」
 東京都中央区日本橋本町2-4-12
 03-3279-2361

 
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2008年4月9日(水)

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