「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第861回
まだ東海道をさまよっている(その2)

焼津の小川漁港の食堂で海鮮丼を味わったあと、
やはり街の人気スポット、さかなセンターへ回る。
深刻なリセッションのせいか
この市場も客足が衰えて活気がない。
そのぶん数少ない客を何とか取り込もうと
店々の客引きがかまびすしくも痛々しい。

バスで街の中心に戻り、荒祭りで名高い焼津神社へ。
人通りもまばらな焼津市内だが
東海一の荒祭りのときだけは街全体が
祭り一色に染まるという。

そうこうするうち、初秋の陽は早くも傾き始めた。
さて、どうしたものだろう。
釣瓶落としの陽のことだ、日暮れを待ってから
ローカル色豊かな料理屋の暖簾をくぐろうか、
それともどこかよその街を訪ねてみようか。

良質の養殖うなぎで知られる榛原郡吉田町は
焼津から近いものの、交通の便が悪い。
藤枝や島田など東海道沿いの宿場町にもそそられるが
この日は日帰りの予定。
西へ下っていくのも帰りのことを考えると気が進まない。
結局、県庁所在地の静岡に立ち寄ることにした。
静岡なら焼津から在来線で15分足らずだし、
帰りの列車では気に入りの「東海軒」の駅弁を
広げる楽しみもあろうというものだ。

3年ぶりで降り立つ静岡の駅前は様相を異にしていた。
新幹線の車窓からも見えていた「東海軒」が消えた。
もっとも駅弁は駅ビル内で買い求めることができる。
まずは街に飛び出し、駿府城界隈を散策。
そして夕暮れには繁華街をさまよって店の物色である。

外見に何となく誘われた「ほうとく」という酒場へ。
歩き回ったので生ビールがことのほか旨い。
中ジョッキを一気に飲み干し、瓶ビールに移行する。
つまみは秋刀魚の刺身ともつのカレー煮だ。
秋刀魚はおろし方が稚拙で、見てくれが悪い。
こういうものは包丁のエッジが立っていないといけない。
生酢をもらって自分で勝手に〆て食べた。
もつのカレー煮は静岡近辺の居酒屋でよく見掛ける。
煮込みを見るとつい手を出してしまうが
東京の下町の水準には遠く及ばない。

もう1軒、行きたい気持ちを抑えて静岡駅に戻った。
缶のビールとワンカップの日本酒に
「東海軒」の幕の内弁当とシューマイを購入し、
列車が走り出すのと同時にご開帳。

この掛け紙がすばらしい
photo by J.C.Okazawa


わさび漬がいかにも静岡的
photo by J.C.Okazawa


初対面のシューマイは包んだ皮がおいしそう
photo by J.C.Okazawa

見るからに旨そうなシューマイは見掛け倒しであった。
中身が粉っぽく、返す返すも残念至極。
幕の内弁当のほうは勝手知ったる味だから安心。
このおいしさは第51回参照のこと。
とにもかくにも幕の内のおかげで楽しい帰り道となった。

ところが好事魔多しのことわざ通り。
東京駅で山手線に乗り換えてから気がついた。
尻ポケットに入れていたはずのデジカメがないのだ。
いつの間にかポケットから滑り落ちたらしい。
カメラ本体よりも撮った写真に未練が残る。
やれやれ、厄介なことになっちまったぞ。


【本日の店舗紹介】
「ほうとく」
 静岡県静岡市葵区呉服町2-2-7
 054-255-0280

 
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2009年10月21日(水)

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