第1074回
予約を入れて鯛茶漬け
過日、飛び込んで空振りに終わったお昼の鯛茶漬け。
そう、湯島の裏路地にひっそりとたたずむ、
その名も「湯島一二一」のことである(第1061回参照)。
名代の鯛茶はごはんはむろんのことに
主役の鯛までお替わり自由とのふれ込み。
それが千円札1枚でいただけるとあっては
費用対効果に敏感な近所のOLのみなさんが
野放しにしておくわけがない。
この店は昼の約20倍の支払いとなる夜でさえ、
なかなか予約の取れない人気店。
事実、過去において2度ほどトライしたが
席を確保できず、ばかばかしくなって挫折した。
たまたま昼どきに通りかかった弾みで飛び込み、
案の定、袖にされたのだから静かに寝ていた腹の虫を
起こされた心持ちになるのもむべなるかな。
そこで昼の予約を取ったうえで出掛けた。
11時半と12時半だったかな?
とにかくランチタイムは2回転制である。
ちょっと遅れて11時40分に訪れると、
入口近くの小さな2人用テーブルだけが空いていた。
一応、限定20食を謳ってはいるが
この込み具合では明らかにもっと提供しているはずだ。
それとも20食×2回転=40食限定なのであろうか。
ほどなく運ばれた鯛茶漬けセットはかくの如し。
 |
小鉢&小皿が充実
photo by J.C.Okazawa
|
胡麻だれで和えた真鯛は3.5切れ。
 |
たっぷりのわさびは混ぜわさび
photo by J.C.Okazawa
|
あとは、油揚げと茄子の煮びたし、出汁巻き玉子、
干し大根醤油漬け&きゅうりしば漬け、
油揚げ・豆腐・三つ葉の味噌椀、ごはんの陣容。
煮びたしには三つ葉が散っており、
油揚げと合わせて、味噌椀との食材の重複が気になる。
茶漬けにはせず、刺身のままをごはんのおかずとした。
鯛茶漬け・まぐろ茶漬けは好物ながら
茶漬けにするのは最後の一口か二口がいいところ。
ほとんどお刺身ごはんとして食べてしまう。
鯛とごはんをお替わりすると、
鯛は3切れ、ごはんは1膳目の7割方の盛りだった。
鯛もごはんもお替わりをして初めて他店の1人前の分量だ。
これじゃ一種のトリックじゃないかと思うのは早とちりで
追い回しの若い衆はちゃんともう一度、
お替わりのあるやなしやを、丁寧に訊ねてくれた。
加えてデザートのアイスクリームがユニークにして美味。
 |
塩味を利かせたバニラアイスにきな粉が掛かる
photo by J.C.Okazawa
|
細かい部分に多少の難点はあるものの、
千円札1枚でこの食膳を味わえるのはうれしい。
特に若いサラリーマン・OLの方々には
“和食入門”の第一歩として出向いていただきたい。
と、ここまではほぼ順風満帆。
が、ある常連客が入店した際のことである。
「いらっしゃいませ! いつもお世話になっております。
奥のお席をご用意しておきました!」
このことである。
「こちらにどうぞ」とさりげなく、
奥へ案内すれば済むことではないか。
いかにもお得意様に特別席をキープしておいたと
言わんばかりで常連客はご満悦でも
ほかの客はみな“イヤ〜な印象”を受けてしまう。
殊に入口脇の小卓で客が出入りするたびに
背中を掠められる身にはその印象の倍加も致し方なし。
でなわけで、ヒガミ根性丸出しのJ.C.でございました。
【本日の店舗紹介】
「湯島一二一」
東京都文京区湯島3-35-1.
03-5846-3510
|