第1137回
煙いムサコに行って来た(その1)
賑やかなパルム商店街を擁するムサコに行って来た。
ムサコは東急目黒線・武蔵小山のことである。
二子玉川をフタコ(ニコタマは古い)と呼ぶが如く、
当節の若者は武蔵小山をムサコと呼ぶのだそうだ。
ここのところ、やたらと私鉄沿線づいている。
この日は先日の第129回で問題視した、
焼き鳥の煙りが駅前に充満しまくりの町を再訪したのだ。
もちろん煙りの元凶、「鳥勇」を実食するためである。
パルムは中原街道をはさんで
戸越銀座と筋違いでつながっている感じ。
戸越銀座は言わずと知れた、
日本全国にはびこる○○銀座のさきがけである。
都内屈指の超ロング商店街同士が
こんな位置関係にあるなんて、意外に気づかぬものだ。
当日は文化の日。
休日の午後には長距離散歩を心がけており、
この日のコースはやや短めながら
大森―大森町―梅屋敷―蒲田であった。
蒲田から西島三重子の歌った「池上線」に乗り、
戸越銀座にやって来たわけだ。
戸越銀座を抜け、パルム商店街の言わば、
尻っ尾のほうから足を踏み入れた。
すると早くも鼻腔が焼き鳥の匂いをキャッチする。
実はこの尻っ尾に「鳥勇本店」があるのだ。
駅前の店舗と合わせ、商店街の頭と尻っ尾を
しっかり抑えた恰好になる。
したがって商店街に居る客はすべて「鳥勇」の網に捕獲され、
文字通り、一網打尽状態に晒されている。
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本店のほうは人もまばら
photo by J.C.Okazawa
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両店舗ともに焼き鳥は一律1本150円。
本店には缶ビールがあって1缶300円。
しかしこの状況下では
体裁が悪くて立ち飲みなんかできやしない。
当初の狙い通りに商店街の頭に位置する駅前店に足を向ける。
それにしてもパルム商店街、
休日ということも重なってか、ものスゴい人混みである。
アーケードのおかげで、それのない戸越銀座よりも
人出では勝っているように見受けられた。
失礼ながら私鉄沿線のたった一駅の界隈に
こんなにもたくさんの人々が棲んでいたとは!
さあ、やってまいりました、「鳥勇駅前店」。
風力及び風向きの加減から今宵はそれほどケムくない。
それでも多少の煙りのたなびきは目視できたし、
焼き鳥が焼ける甘く香ばしい匂いは周囲に漂いまくっている。
店頭はご覧の繁盛振りだ。
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持ち帰りと立ち食いの客があふれんばかり
photo by J.C.Okazawa
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いやあ、結構な商売じゃないですか。
まずはプラコップ入りの生ビールを所望する。
目分量で350mlくらいかな、
高くはないけれど安くもない。 店主だろうか、立ち飲みのクセで
引き換えに500円玉を差し出すと、
「ウチはあと払い!」――いきなりの教育的指導であった。
=つづく=
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