やがて本気で好きになります

第28回
優しき元ボクサーのピアニスト

この連載の5回目で、
マイルス・デイヴィスのオススメアルバムとして、
『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』
というアルバムを紹介しましたが、覚えてますか?

このアルバムのピアニストは、レッド・ガーランド。

マニアからは、軽くみられる傾向にあるピアニストですが、
私は彼のピアノが大好きです。

非常にノリの良い、センスの良いピアノを弾きます。
まるで真珠が転がるように
コロコロと独特な粒立ちの音色を奏でます。

これだけでも、彼をオススメするに充分なのですが、
私は彼のエピソードを知ってからというもの、
ますますガーランドのことが好きになりました。

なんと、彼の前歴はプロボクサーだったのです。

軍隊生活から除隊後に、念願のプロボクサーになった彼は、
たちまち試合で30勝をあげました。強かったのです。
しかし、ある日のこと、
試合に予定されていた相手の都合が悪くなり、
代わりに立てられたのが、
かつて一緒に練習をした仲間だったのです。

友達を殴り倒す気になれずに彼は試合を放棄してしまい、判定負け。
マネージャーからはボクサーに向かない男だと見離された彼は、
ジャズピアニストに転向したのです。

女々しいかもしれませんが、私はこのエピソードが大好きです。
きっと優しい心を持ったピアニストだったのでしょうね。

この優しさが、
彼のピアノにあらわれているような気がしてなりません。

彼のアルバムでオススメなのは、
『グルーヴィ』(プレスティッジ)。
ピアノトリオという、
ピアノ+ベース+ドラムの3人編成で演奏されています。
ベーシストは、ポール・チェンバース。

おや?彼はマイルス・デイヴィスの
『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』にも参加している
ベーシストでしたね。
気心知れた仲間との、リラックスした演奏が楽しめます。

軽やかで洒脱に演奏する彼のピアノは、一度聴けば、
きっと病みつきになることでしょう。

《ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン》という曲の
彼の演奏を聴いてもらえれば、
先述した“真珠のような音色”の意味を
実感していただけることでしょう。

――――――――――――――――――――――――――――

『Groovy』
Red Garland

1.C Jam Blues
2.Gone Again
3.Will You Still Be Mine?
4.Willow Weep For Me
5.What Can I Say (After I Say I'm Sorry)?
6.Hey Now


ガーランドのみならず、ポール・チェンバース(b)の傑作でもあります。
ゴキゲンにグルーヴするベースもお楽しみください。

←前回記事へ

2005年10月24日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ