やがて本気で好きになります

第58回
ジャズのブルース 2

前回の予告通り、今回はジャズの様々なブルースを紹介します。

まずは、《Cジャム・ブルース》。
デューク・エリントン作曲の、
音数の少ない、もっともシンプルなメロディのブルースです。

なにせ、
使っている音はドとソの2音しかないのですから。
♪ソソ・ソソ・ソソ・ソード
これを3回繰り返すだけ。

メロディがシンプルで同じパターンを繰り返す分、
バックのコードの移り変わり、
曲の構造と流れが分かりやすく掴めることと思います。

この曲は、多くのジャズマンが取り上げていますが、
オスカー・ピーターソンや、
第28回で紹介したレッド・ガーランドの演奏が有名、
かつ代表的な演奏です。

もう一つシンプルかつ有名なブルースナンバーを挙げるとすると、
なんといってもチャーリー・パーカーの
《ナウズ・ザ・タイム》でしょう。
シンプルなメロディパターンをいくつか繰り返すことによって
成立しています。

口ずさみやすく、親しみやすいメロディですが、
演奏次第では、非常にカッコ良い内容に変身します。
これは、本人の演奏を聴くのが一番でしょう。

チャーリー・パーカーの代表的ブルースをもう一つ挙げるなら、
《ビリーズ・バウンス》。

このブルースは、
個人的に大好きなブルースで、私もよく演奏するのですが、
前出の《ナウズ・ザ・タイム》とは違い、
ちょっと複雑なメロディや、小粋なタイミングのズラしなど、
ジャズ的なエッセンスがふんだんに盛り込まれていますが、
譜面で見る音符の複雑さとは裏腹に、
ほのぼのと明るい親しみやすい曲調のブルースです。

同じくパーカーの《オウ・プリヴァーヴ》も、
《ビリーズ・バウンス》同様、
音の選択、符割のタイミングとともに、ちょっと複雑ですが、
そのようなことを微塵も感じさせない小粋なブルースです。

パーカーはまだまだ多くのブルースを作っていますが、
彼の作り出すブルースは、印象的なメロディラインと、
モダンジャズの持つ複雑なコード進行や、
一筋縄ではいかない音を発するタイミングのズラしなどが
ふんだんに盛り込まれています。
それでいて、スッキリと聴きやすいものばかり。
ジャズの勉強をするには格好の素材です。

ブルースというと、
陰気で暗いイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、
パーカーのブルースは露骨な暗さや息苦しさはまったくありません。

むしろその逆。
彼のブルースが湛えているのは、
彼のサックスの演奏と同様、
どこまでも開放的で、
天に突き抜けるような明るさとスピード感なのです。

ダメ押しに、パーカーの名ブルースをもう一曲紹介しましょう。
これは、イントロと曲の一部以外は即興なのですが、
《パーカーズ・ムード》が素晴らしい名曲、というか名演です。

これは、先ほど紹介した3曲とは違い、
メランコリックさの漂うブルースです。
しかし、暗くなりすぎないところが、パーカーらしいですね。

おっと、色々なブルースの紹介をするつもりが、
ほとんどパーカーのブルースで字数を費やしてしまいました。

しかし、それだけ
「ジャズのブルースの“いろは”」を手っ取り早くつかみたければ、
パーカーを聴くのが一番なのです。
それだけ、チャーリー・パーカーのブルースには
ジャズのおいしいエッセンスがたっぷりと詰まっているのです。

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『グルーヴィー』
レッド・ガーランド

1.Cジャム・ブルース
2.ゴーン・アゲイン
3.ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?
4.柳よ泣いておくれ
5.ホワット・キャン・アイ・セイ・ディア
6.ヘイ・ナウ


《Cジャム・ブルース》の決定的な名演が収められているレッド・ガーランドの代表作。



『ナイト・トレイン』
オスカー・ピーターソン・トリオ
1.C・ジャム・ブルース
2.ナイト・トレイン
3.我が心のジョージア
4.バグズ・グルーヴ
5.モーテン・スウィング
6.イージー・ダズ・イット
7.ハニー・ドリッパー
8.シングズ・エイント・ホワット・ゼイ・
 ユースト・トゥ・ビー
9.アイ・ガット・イット・バッド
10.バンド・コール
11.自由への讃歌

デリケートなガーランドに対して、オスカー・ピーターソンの《Cジャム・ブルース》は力強い。




『ナウズ・ザ・タイム』
チャーリー・パーカー
1.ザ・ソング・イズ・ユー
2.レアード・ベアード
3.キム(別テイク)
4.キム
5.コズミック・レイズ
6.コズミック・レイズ(別テイク)
7.チ・チ(別テイク)
8.チ・チ
9.チ・チ(別テイク)
10.チ・チ
11.アイ・リメンバー・ユー
12.ナウズ・ザ・タイム
13.コンファメーション

《ナウズ・ザ・タイム》を聴くなら本人による本人のスピード感溢れる演奏が一番。




『名盤JAZZ25選~
2300バード/
サヴォイ・レコーディングス』
チャーリー・パーカー
DISC:1
1.タイニーズ・テンポ
2.アイル・オールウェイズ・ラヴ・ユー・
 ジャスト・ザ・セイム
3.ロマンス・ウィズアウト・ファイナンス
4.レッド・クロス
5.ウォーミング・アップ・ア・リフ
6.ビリーズ・バウンス
7.ナウズ・ザ・タイム
8.スライヴィング・オン・ア・リフ
9.ミアンダリング
10.ココ
11.ドナ・リー
12.チェイシン・ザ・バード
13.シェリル
14.バジー
DISC:2
1.マイルストーンズ
2.リトル・ウィリー・リープス
3.ハーフ・ネルソン
4.シッピン・アット・ベルズ
5.アナザー・ヘア・ドゥ
6.ブルバード
7.クラウンスタンス
8.バード・ゲッツ・ザ・ワーム
9.バルバドス
10.アー・リュー・チャ
11.コンステレイション
12.パーカーズ・ムード
13.パハップス
14.マーマデューク
15.スティープルチェイス
16.メリー・ゴー・ラウンド

ジャズに興味を持った人には、自腹を切ってでも買って与えたいほど、
ジャズのエッセンスと快楽の宝庫。
チャーリー・パーカーのサヴォイレーベルでの録音のマスター・テイクを収録した、
栄養たっぷりな2枚組。




『バード・アンド・デイズ』
チャーリー・パーカー
1.ブルームディド
2.アン・オスカー・フォー・トレッドウェル(別テイク)
3.アン・オスカー・フォー・トレッドウェル(マスター・テイク)
4.モホーク(別テイク)
5.モホーク(マスター・テイク)
6.マイ・メランコリー・ベイビー(別テイク)
7.マイ・メランコリー・ベイビー(マスター・テイク)
8.リープ・フロッグ(別テイク1)
9.リープ・フロッグ(別テイク2)
10.リープ・フロッグ(別テイク3)
11.リープ・フロッグ(マスター・テイク)
12.リラクシング・ウィズ・リー(別テイク)
13.リラクシング・ウィズ・リー(マスター・テイク)

パーカーとディジー・ガレスピーの熱い共演の代表的一枚。
1曲目の《ブルー・ムーディド》は個人的に大好きなブルースナンバーで、聴くと元気が出ます。

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2006年1月2日(月)

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