中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第143回
私のお気に入りの一品

今回の私のお気に入りの一品は「同安窯 青磁劃花碗」です。

青磁の発色はあまり見栄えの良いものではないが・・

同安窯とは、南宋時代今の福建省辺りに散在し、
主に青磁を焼いていた地方窯の総称です。

この同安窯では、一般大衆が使う雑器のようなものや、
これもあまり質の良くない
輸出用の大量生産品などを焼いていました。

少し前に、「私のお気に入りの一品」で紹介した
「珠光青磁」もこの同安窯の作品です。

「珠光青磁」の方は、
あくまでもくだけた作風が日本の茶道における
「詫び寂び」の精神とマッチし、
村田珠光を始めとする詫び茶の達人に愛好された焼き物です。

しかし、今回私が紹介する同安窯の青磁碗は
一般的に言われている
同安窯のくだけた作風とは一線を画しています。

つまり、一般大衆が使う雑器のような
下手な焼き物ばかり焼いていた同安窯の中で、
今回紹介する品はひと際格調高く、その出来が素晴らしいのです。
まるで、石ころの中にピカピカの水晶が
紛れ込んでいたようなものです。

実は、このような現象が起こったのには、理由があります。

この焼き物が焼かれた南宋の時代、
中国の北部は異民族である女真族国家「金」によって滅ぼされ
占領されてしまいました。

仕方なく、当時中国北部で焼き物を焼いていた多くの陶工達は
南へ南へと逃げる事になりました。

そして、ようやく南方に辿り着き、
そこにあった窯で彼らは自分の腕を振るい始めたのです。

当時、陶磁器技術は北の方が上で、南は劣っていましたので、
彼らの技術が喜んで受け入れられた事は容易に想像がつきます。

今回紹介する青磁の碗に刻まれている文様には、
もともと耀州窯や定窯など中国北部の窯で開発された
「劃花」という技法が使われています。

「劃花」という技法は、
陶磁器の破片を更に薄く削り、
それを用いてまだ乾ききっていない陶磁器を削って
文様をつける技です。

今回紹介する作品のように、
正に流れるように文様を削る為には
相当熟練した技術が必要だったでしょう。

北部を追われて南部の冴えない地方窯で一級品を焼いた・・
当時の陶工の想いがこの青磁碗に詰まっています。

刻まれた文様の滑らかな流れは超一級の腕前

一見、北部の窯である「耀州窯」に見えるが、
胎土や高台の作りは紛れもない同安窯系である

北宋時代、北方青磁の名窯
「耀州窯」の「劃花青磁」の代表作品


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2008年9月8日(月)

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