「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第453回
読者激賞の ばらちらし

ときどきメールで情報をくれる読者のK原さん。
築地場外「魚河岸千両」(368回参照)の
海鮮ひつまぶしを奨めてくれたのも彼だ。
彼に限ったことではないのだが、
ネット上の「魚河岸千両」に対するカキコミは
どうしたものか、海鮮ひつまぶしに感動の嵐だ。

そのひつまぶしがあまりにヒドいので
こんなものに感動する安っぽい若者が
もしも自分の息子だったら
カンドウしてやると息巻いたところ、
「カンドウでっか!トホホ!」と泣いていたのも
くだんのK原さんであった。

名誉挽回とばかりに
彼が再び推奨してきた一品が
神田小川町「すし昌」のばらちらし。
J.C.気に入りの四谷「すし匠」(第410回参照)の
それよりも旨いと断言してはばからないのだから
ずいぶんと入れ込んだものだ。

そこまで言われちゃ、看過するワケには参らぬ。
悪夢もそうは続くまいと、出掛けてみることにした。
この日は近くの神保町シアターで
市川雷蔵主演の「ぼんち」を観る手はずとなっている。
開演時間を考慮しながらランチタイムが
そろそろ終わる時間帯におジャマすると、
先客は中年男性が1人のみ。

さっそく、ばらちらし(1000円)をお願いする。
これには白味噌仕立てのしじみのお椀が付いた。
ちらしの内容をつまびらかにしてみると
 赤身づけ・いくら・いか・とび子・ずわい蟹・
 小柱・北寄貝・たこ・白身・数の子・玉子・
 きゅうり・白ごま・ねぎ・海苔
一応、品数は豊富に揃っているものの、
器を彩るのは、ほとんど赤身づけといくら。
ほかのものは、ほんの申し訳程度に少しずつ。
視力の弱い人なら虫眼鏡でもなければ認知不能なほど。

ただし「魚河岸千両」の海鮮ひつまぶしよりずっと上。
値段と内容を照らし合わせてみても不満はまったくない。
余談ながら先日、「魚河岸千両」の店先を通り掛かると
数ヶ月前とは打って変わって閑古鳥が鳴いていた。
TV番組によって作られた人気の一過性は実に怖ろしい。
客のほとんどが、はす向かいの
「お食事処たねいち」に流れている。

もっとも「たねいち」はまぐろ丼が700円、
海鮮丼が1000円という値付けだから
消費者に対するインパクトがまるで違う。
すぐ目の前で、この値段で勝負されては
太刀打ちするのはきわめて難しかろう。

そこそこの満足感を得ることができ、
K原さんには感謝しつつ、「すし昌」をあとにする。
その後観た「ぼんち」はじゅうぶんに楽しめた。
市川崑監督、市川雷蔵主演の映画は1960年の作品。
珍しくも老け役の雷蔵がとてもよい。
ラストの美女3人による入浴シーンも白眉だ。
京マチ子に若尾文子に越路吹雪。
昔の大女優たちの首筋から肩の線が意外にもたくましい。
胸元も美しく、なおかつセクシーに躍動していた。


【本日の店舗紹介】
「すし昌」
 東京都千代田区神田小川町3-11-5
 03-3295-8209

 
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2008年3月27日(木)

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