第941回
またもや珍魚を発見
まず初めに昨日のコラムの補足を。
かつ丼を作るのに、できることなら
親子鍋を買い求めてほしいと書いたが
親子鍋って何のことか判りかねる向きもあろう。
この鍋は大鍋・子鍋が親亀・小亀のように
セットとなっているものではなく、
親子丼のアタマを煮るための鍋のこと。
打ち出しのアルミ鍋に木製の柄(え)が付いている。
柄が垂直に立っている立柄のほうが
フライパンの柄のように横に出ている横柄より、
ずっとプロらしく見えてカッコいい。
木の柄が焦げにくい利点もある。
そして蒸気穴の空いた蓋付きのものが使いやすい。
煮え加減をのぞけるし、目玉焼きも上手に焼ける。
さて、今日の本題。
ついおととい(第931回参照)、
御徒町にある鮮魚のデパート「吉池」にふれたと思ったら
またまた、ここで珍しいサカナに遭遇した。
まずはとくとご覧あれ。
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熱帯魚を連想させる縞模様の小ザカナ
photo by J.C.Okazawa
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銀鏡(第851回参照)にも驚いたけれど、
初めてお目に掛かったこいつにもビックリだ。
石鯛のミニチュア版に見えないこともないが
あちらは太い縦縞、こちらは細い横縞だ。
サイズはエボ鯛を一回り縮小した感じ。
2尾で500円だから値段の安い下魚ではけっしてない。
魚名をカゴカキといい、小田原の産である。
小田原でカゴカキというと
思い出すのは、童謡「おさるのかごや」。
♪ エッサ エッサ エッサホイ サッサ
おさるのかごやだ ホイサッサ
日暮れの山道 細い道
小田原ぢょうちん ぶらさげて ♪
(作詞:山上武夫)
ここでカゴカキと小田原が結びつくのだが
名前の由来はこの歌とは関係がないようだ。
調べてみても、みな眉唾(まゆつば)で
まったく説得力に欠けるものばかり。
ちなみに漢字では籠垣と書くらしい。
とにかく食べて見なけりゃ始まらない。
さっそく買って来た。
塩を振って塩焼きにすると、漂う香りはずいぶん磯臭い。
見掛けによらず、サカナとしての地力に満ちている。
焼き上がりをそのまま口に放り込む。
ム、ムムムッ、はたして、美味至極であった。
小魚なので身肉は少ないものの、
プリッと弾む白身がとてもおいしい。
生醤油をチョロリ垂らして、さらに香ばしい。
たまたま冷蔵庫にあったカボスを搾ってやると
いやはや、もうたまりませんな。
関東以西の太平洋側で獲れるというから
暖流に棲むサカナと思いきや、
能登半島以西の日本海側にも棲息しているという。
まったく名が体を表していないヤツだが
見つけたら“即買”を強くオススメする。
お世辞抜きに“まいう〜!”でござる。
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