あるとき、この玉蘭筍を出したら、「うまい、うまい」といって安岡さんにほめられたので、「本当はこんなに大きな豚肉が一緒に入って煮込んであるんだけど、今日はみなお年寄りだから、肉の方は出さないんですよ」と説明したことがあった。そうしたら同席したお客たちが、「豚肉の方はどうするのですか。食べられないのですか」と口々にきく。確かその夜のお客は、赤札堂アブアブの社長小泉一兵衛夫妻、駐フィリピン大使沢木正男夫妻、それに組織工学の糸川英夫先生であった。
私は干筍と一緒に煮込んだ豚肉はおいしものだけど、皆さんには食べさせないんだ。コレステロールの心配をされるような方は筍の方だけで我慢して下さい、とくりかえした。「じゃどうするんです。まさか捨ててしまうわけじゃないでしょうね?」と念を押すから、「実は明日、もう一回、二次会をひらいて、二十代から三十代の若い友達を招んで、肉の方は消化してもらうことになっているのです」と種明かしをして大笑いになった。
干筍もそういう処理の仕方をするが、大根のスープも同じように、表料理と裏料理がある。
この方は豚肉の代わりに牛肉の塊を使ってダシをとる。大根を短冊に切ったものを入れてゆっくり煮ると、大根に牛肉のダシの味がしみこむ。これに塩で味をつけて、大根が入っただけのスープを出すのである。
いつか親しい友人が、「このスープ、おいしいですね。おかわりしてもいいですか」ときくから、「もちろん、いいですとも」といったら、自分で吸物椀を持ってさっさと台所に入っていった。戻ってきて、「わあッ。びっくりした。大きな牛肉の塊が入っているんですね。おいしいのも道理で、元手がかかっているんですね」この牛肉はダシをとったあとだから、パサパサして味はないが、切って蠔油(カキのソース)をつけて食べれば結構おいしく食べられる。これまた翌日のヤング向きということになる。
私の家では、宴会の種類を大雑把に大宴と小宴に分けている。大宴といっても、三十人、五十人呼ぶ宴会のことではない。三十人、五十人招ぶこともたまにはあるが、そういう人数になると、台所の設備も間に合わないし、テーブルの置き場もないから、どうしても立食になる。
私は立食もセルフサービスも苦手の方だから、目の届く範囲でサービスの行き届いた食事が行なわれることを理想としている。だから大宴も小宴も、十二人で坐れる一卓以内の人数に限られている。両者の違いは、大宴の場合はメニューを私がつくるのに対して、小宴の場合はメニューづくりを家内かコックに任せているところである。

 2 

←前章へ

   

次章へ→
目次へ
ホーム
最新記事へ