「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1118回
もう1軒あった「小倉庵」

先日、当コラムでかつての月の家円鏡にふれて
1960年代、円鏡は談志・圓楽・志ん朝とともに
落語四天王と称されたほどの噺家であった。

こう書いたら(第1112回参照)、
読者の「浅草見番前 いづみや」さんからお便りが届いた。
愉快なので全文を紹介したい。

いつも楽しく拝見させて戴いております
さて四天王の続きですが…
落語四天王の仲間入りを外された
先輩の林家三平は鈴本の高座で
愚痴りながら
「向こうが四天王を名乗るなら
 あたしゃ、今日からつけ麺大王を名乗りますよ・・・」
昔話でした
季節の変わり目でございます、ご自愛下さいませ
浅草見番前 いづみや

いや、初耳でしたが実におもしろい。
奇しくもつけ麺にイチャモン(第1113回参照)を
つけたばかりなので余計に笑ってしまった。
「いづみや」さん、ありがとうございました。

ところで、くだんの「つけめん大王」には
はるか昔、1度だけ訪れたことがある。
1970年代初頭のことながら、広い東京のどこだったろう。
おいしく食べたのかどうかさえ忘却の彼方である。
すばらしければ記憶に残っているはずだから
そうでなかったことだけは確かだ。

ともあれ、今日のテーマはつけ麺ならぬ日本そば。
これまた紹介したばかりの「小倉庵」(第1104回参照)だ。
データ欄に北大塚の同名店と間違われぬよう明記した。
広くもない町に同名のそば屋2軒は紛らわしい。

「小倉庵」の天ぷらそばを紹介した数日後、
近所の大塚三業通りを徘徊していると、
またしても「小倉庵」に出くわした。
「ありゃりゃ、何てこったい!」――
北大塚どころではない、同じ南大塚に同名店があったのだ。
当夜は「江戸一」と「富久晴」をハシゴの予定。
だのに気になって仕方なく、
取りあえず、すでに訪れたほうの「小倉庵」に入店してみた。
かれいの煮付けで冷や酒を1杯やり、すぐにお勘定。
支払い時に何気なく訊ねてみると、
あちらは暖簾分けとの応えだった。
「なるほど、それでヨソにない種モノが共通なんですね」――
こう話題を振ってみると、
「あら、そうですか、あちらにもありましたか?」――
どうやらお互いの交流はないらしい。

その5日後、三業通りで発見したばかりの「小倉庵」を訪ねた。
ビールを飲み、日本酒を飲み、
にしん煮を食べ、鳥焼きを食べ、桜海老かき揚げを食べた。

京風のにしん煮
photo by J.C.Okazawa


長ねぎと炒めた鳥焼き
photo by J.C.Okazawa


三つ葉の目立つ桜海老かき揚げ
photo by J.C.Okazawa

まだ宵の口、ほかに客はいない。
ここでも勘定を済ませながら訊ねてみた。
「こちらは近所の『小倉庵』さんの姉妹店で?」
「いいえ、暖簾分けですが、本家は山吹町です」
「えっ、あの早稲田の山吹町ですか?」
「そうなんですよ」
な〜るほど、やっと合点がいった。
すべての道は早稲田に通じ、みなその暖簾分けらしい。
でも、多くはない屋号の「小倉庵」がなぜ大塚に3軒も?
あらたなる疑惑に好奇心を触発されたのだった。

そしてトンデモないことに気がついた。
1104回で紹介した「小倉庵」のデータが
実は今回発見した三業通り店のものだったのである。
何が“お間違えなきように”である。
自分で間違えていれば世話はない。
ここにお詫びして訂正いたします。


【本日の店舗紹介】
「小倉庵」
 東京都豊島区南大塚2-40-10
 03-3942-1314

【本日の店舗紹介】※
「小倉庵」
 東京都豊島区南大塚1-42-8
 03-3941-8230

 注:こちらが新発見の三業通りにある店舗です

 
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2010年10月18日(月)

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